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出張買取は危険か。法律が守る物と守らない物を先に分ける

法律が守る物と守らない物がある

出張買取が危険かどうかは、業者の善し悪しより先に、何を売るかで決まります。特定商取引法には訪問購入という章があり、8日間のクーリング・オフや、物を渡さずに拒める権利が定められています。ただしこの規制は、すべての物にかかるわけではありません。家具と大型家電は、政令で対象から外されています。

この記事では、規制がかかる物とかからない物を条文で分けたうえで、かかる場合に使える権利と、かからない場合の身の守り方を整理します。

この記事で分かること
  • 訪問購入の規制がかかる物と、政令で外されている物
  • クーリング・オフが使える期間と、その日数の数え方
  • 頼んでいないのに来た業者が、その時点で違反していること
  • 自分から呼んだ場合に、どの権利が残るのか
  • 対象外の物を売るときに、法律の代わりにできる備え
目次

危険と言われる理由は、法律の守りが物によって変わるから

出張買取をめぐる解説の多くは、悪質な業者の手口と、業者の選び方に紙面を割いています。それも必要ですが、その前に確認しておくことがあります。同じ出張買取でも、売る物によって、法律が用意している保護がまったく違うということです。

着物や貴金属を売るときには、8日間のクーリング・オフが使えます。ところが家具や大型家電を売るときには、同じ権利が使えません。業者が同じでも、訪問の形が同じでも、扱いが変わります。この差は、業者を並べて比べているかぎり見えてきません。

訪問購入とは、営業所以外の場所で買い取る取引のこと

まず言葉を定めます。特定商取引法が訪問購入と呼んでいるのは、次の取引です。

店舗に持ち込む買取と、自宅など営業所以外で買い取る訪問購入では、かかる法律が違うことを示した図
同じ買取でも、店に持ち込むか自宅に来てもらうかで、かかる法律が変わる
特定商取引法 第58条の4

この章及び第五十八条の二十四第一項において「訪問購入」とは、物品の購入を業として営む者(以下「購入業者」という。)が営業所等以外の場所において、売買契約の申込みを受け、又は売買契約を締結して行う物品(当該売買契約の相手方の利益を損なうおそれがないと認められる物品又はこの章の規定の適用を受けることとされた場合に流通が著しく害されるおそれがあると認められる物品であつて、政令で定めるものを除く。以下この章、同項及び第六十七条第一項において同じ。)の購入をいう。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

読むべき点が2つあります。1つは「営業所等以外の場所において」という部分です。店に持ち込んで売る場合は訪問購入にあたりません。自宅に来てもらって売る出張買取が、これにあたります。

もう1つが、かっこの中にある「政令で定めるものを除く」です。ここで対象から外される物が決まっています。

家具、家電、書籍は政令で対象から外れている

訪問購入の規制から外される物品は、特定商取引法施行令の第34条に6つ挙げられています。

1回の出張買取でも、着物や貴金属は訪問購入の規制がかかり、家具や家電、書籍は施行令第34条で対象から外れることを示した分岐図
1回の訪問の中でも、着物と家具では扱いが分かれる
特定商取引法施行令 第34条

法第五十八条の四の政令で定める物品は、次に掲げる物品とする。一 自動車 二 家庭用電気機械器具(携行が容易なものを除く。) 三 家具 四 書籍 五 有価証券 六 レコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物

特定商取引に関する法律施行令(昭和51年政令第295号)

この6つを出張買取の場面に置き換えると、次のようになります。

区分具体例訪問購入の規制
対象になる着物、貴金属、ブランド品、骨董品、切手、楽器、携行が容易な小型家電かかる
対象から外れる家具、大型の家電、書籍、自動車、有価証券、CD・DVD・レコードかからない
施行令第34条にもとづく区分です。判断に迷う品目は、消費生活センターで確認してください。

つまり、タンスやソファ、冷蔵庫や洗濯機を出張買取で売る場面では、この章の規定が働きません。クーリング・オフも、引渡しを拒める権利も、頼んでいない訪問の禁止も、いずれも使えないことになります。

一方で、実家の片付けで出てくる着物や骨董品、貴金属は対象です。同じ日に同じ業者へ売っても、物によって扱いが分かれます。

家庭用電気機械器具には「携行が容易なものを除く」という但し書きが付いています。手で持ち運べる小型の家電は対象に戻ります。大型か小型かの線引きは条文に書かれていないので、迷う場合は対象外として扱い、あとで説明する備えのほうを取ってください。

対象になるなら、8日間のクーリング・オフが使える

売る物が規制の対象であれば、契約したあとでも撤回できます。

クーリング・オフの8日間は契約書面を受け取った日から数え、8日目に郵便を出せば有効であることを示したタイムライン図
8日は書面を受け取った日から数え、8日目に出せば間に合う
特定商取引法 第58条の14第1項

購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約を締結した場合を除く。)におけるその売買契約の相手方(以下この条及び次条において「申込者等」という。)は、書面又は電磁的記録によりその売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除を行うことができる。ただし、申込者等が第五十八条の八第一項又は第二項の書面を受領した日(その日前に第五十八条の七第一項の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合においては、この限りでない。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

数え方に注意が必要です。8日の起点は、買取が行われた日ではなく、書面を受け取った日です。書面をもらっていなければ、8日は始まりません。業者が書面を渡さないまま引き取っていった場合、期間はまだ動いていないことになります。

もう1つ、効力が生じるタイミングも条文で決まっています。

特定商取引法 第58条の14第2項・第3項

申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。/申込者等である売買契約の相手方は、第一項の規定による売買契約の解除をもつて、第三者に対抗することができる。ただし、第三者が善意であり、かつ、過失がないときは、この限りでない。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

発した時点で効力が生じるので、8日目に出した通知が9日目に届いても間に合います。相手に届いた日ではありません。記録が残る形で出しておくことが大切です。

第3項は、業者がすでに第三者へ転売していた場合の話です。解除したことを、その第三者にも主張できます。ただし、その第三者が事情を知らず、知らないことに落ち度もなかった場合は主張できません。

8日の間は、物を渡さずに拒める

クーリング・オフには弱点があります。物を先に持っていかれると、撤回しても戻ってこないことがあります。そこで条文は、期間中の引渡しそのものを拒めるようにしています。

テーブルの上の契約書とペンを差し出す手
その場で書面にサインを求められても、押し切られる必要はない
特定商取引法 第58条の15

申込者等である売買契約の相手方は、前条第一項ただし書に規定する場合を除き、引渡しの期日の定めがあるときにおいても、購入業者及びその承継人に対し、訪問購入に係る物品の引渡しを拒むことができる。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

契約で引渡しの期日を決めていても拒めます。売ると決めたあとでも、8日が過ぎるまでは手元に置いておけるということです。

そして、この権利があることを業者のほうから告げる義務があります。

特定商取引法 第58条の9

購入業者は、訪問購入に係る売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受ける時は、その売買契約の相手方に対し、第五十八条の十四第一項ただし書に規定する場合を除き、当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければならない。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

その場で引き取ろうとしながら、この説明をしない業者は、この条文に反しています。業者を見分ける材料として、これは分かりやすい基準です。

頼んでいないのに来た業者は、その時点で違反している

突然の訪問や、電話での勧誘についても条文があります。

特定商取引法第58条の6が定める、不招請勧誘の禁止、勧誘前の意思確認、再勧誘の禁止の3つを並べた図
特定商取引法第58条の6が禁じている3つの行為
特定商取引法 第58条の6

購入業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、営業所等以外の場所において、当該売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはならない。/2 購入業者は、訪問購入をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、勧誘を受ける意思があることを確認することをしないで勧誘をしてはならない。/3 購入業者は、訪問購入に係る売買契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約の締結について勧誘をしてはならない。

特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)

3つの禁止が並んでいます。頼んでいない人に勧誘してはいけない。勧誘の前に、勧誘を受ける意思があるかを確認しなければならない。断った人に、もう一度勧誘してはいけない。

第1項が効いてくるのは、アポなしの訪問と、こちらが求めていない電話です。この時点ですでに違反なので、話を聞く必要はありません。玄関を開ける前に断って構いません。

自分から呼んだ場合、どの権利が残るのか

ここは混同されやすい部分です。第58条の6の第1項は「勧誘の要請をしていない者」を守る条文なので、ご自身から申し込んで来てもらった出張買取には働きません。

自分から業者を呼んだ場合は不招請勧誘の禁止が適用されない一方、契約書面の交付やクーリング・オフ、引渡しの拒絶、再勧誘の禁止は残ることを示した図
自分から呼んでも、クーリング・オフや引渡しの拒絶は残る

一方で、クーリング・オフと引渡しの拒絶は、自分から呼んだ場合でも使えます。第58条の14と第58条の15は、勧誘の有無で分けていないからです。呼んだのだから撤回できない、ということにはなりません。

勧誘の有無で変わるもの、変わらないもの
  • 変わる:頼んでいない訪問や電話の禁止(第58条の6第1項)
  • 変わらない:8日間のクーリング・オフ(第58条の14)
  • 変わらない:期間中に引渡しを拒める権利(第58条の15)
  • 変わらない:引渡しを拒める旨を告げる義務(第58条の9)

ただし、これらはすべて売る物が規制の対象であることが前提です。家具や大型家電では、呼んだかどうかにかかわらず働きません。

対象外の物を売るときに、法律の代わりにできること

家具や大型家電には、撤回できる期間がありません。だからこそ、契約の前に済ませておくことが重要になります。

渡す前に済ませること
  1. 品目ごとの金額を紙かメッセージで受け取ります。合計だけの提示は受けません。
  2. 出張費、査定料、搬出費、キャンセル料の有無を、作業前に総額で確認します。
  3. 売らない物を別の部屋にまとめ、査定の対象から外します。
  4. 写真を撮っておきます。型番が見える角度で撮ると、あとで相場を調べられます。
  5. 1人で立ち会わず、家族の誰かに同席してもらうか、電話をつないでおきます。

この5つは、クーリング・オフのように後から取り消す手段ではなく、取り消す必要が出ないようにするための手順です。対象外の物ほど、ここに時間をかける価値があります。

売る物が家具や家電に偏っているなら、出張買取ではなく、先に相場を調べてから持ち込む方法も選べます。判断の順番は不用品の処分方法を条件で選び分ける手順にまとめています。

古物商許可と、不用品を運ぶ許可は別物

買取業者が持っているべきなのは、古物営業法の古物商許可です。中古品を買い取って売るための許可で、公安委員会が出します。訪問して買い取る場合は、行商をする旨の届出も必要で、業者は行商従事者証を携帯することになっています。

古物商許可と一般廃棄物収集運搬業許可の違いを、許可を出す先とできることで並べた図
買い取る許可と、ごみを運ぶ許可はまったく別の制度

ここで混ざりやすいのが、買取と回収の違いです。「売れない物も一緒に引き取ります」と言われた場面では、買取ではなく、ごみの回収になります。家庭から出たごみを集めて運ぶには、市町村長が出す一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、古物商許可では代用できません。

無料で引き取ると言われても同じです。運送費や手数料の名目で支払いが発生するなら、ごみの回収にあたります。許可の確認の仕方と、無許可業者が使う説明の型は不用品の処分方法を条件で選び分ける手順に整理しています。

依頼する前と、当日に確認すること

場面確認すること確認できないときの判断
申込みの前会社名、所在地、固定電話、古物商許可の番号と公安委員会名サイトに電話番号しかない業者は見送ります
申込みの前出張費、査定料、キャンセル料の有無と金額作業前に総額が出せない業者は見送ります
訪問の当日行商従事者証の提示提示できない場合は家に入れません
訪問の当日品目ごとの金額が書かれた明細合計だけの提示なら、その場では売りません
訪問の当日規制の対象なら、引渡しを拒める旨の説明があるか説明がない時点で第58条の9に反しています
対象外の品目では最後の行が使えません。その分、上の4行を厚く確認してください。

当日に金額が変わる業者の多くは、申込みの時点で条件を絞り込んでいません。逆に、搬出の経路や階数を細かく聞いてくる業者は、現場で加算する前提を持っていないと考えられます。

トラブルになったときの相談先

契約したあとで不安になった場合や、業者が撤回に応じない場合は、消費者ホットラインに相談できます。局番なしの188で、最寄りの消費生活センターにつながります。

相談のときに手元にあると話が早いものは、契約書面、明細、業者の名刺、やり取りのメッセージ、品物の写真です。渡してしまったあとでも、記録があれば交渉の材料になります。

身の危険を感じた場合、たとえば帰ってくれない、玄関から出してくれないといった状況では、消費生活センターではなく警察に連絡してください。

よくある質問

出張買取は結局のところ危険なのですか

取引の形そのものが危険なわけではありません。危険と言われる場面の多くは、頼んでいない訪問や電話から始まっています。それは特定商取引法第58条の6に反する行為なので、その時点で断って構いません。ご自身から信頼できる業者を選んで呼ぶ場合は、話が変わります。

家具を売るときもクーリング・オフはできますか

できません。家具は特定商取引法施行令第34条で訪問購入の対象から外されています。大型の家電、書籍、自動車、CD・DVDも同じです。売ると決める前に、品目ごとの金額を書面で受け取っておいてください。

クーリング・オフの8日はいつから数えますか

契約の書面を受け取った日から起算して8日です。買い取られた日からではありません。書面を渡されていない場合、8日はまだ始まっていないことになります。

期限ぎりぎりに出しても間に合いますか

通知を発した時点で効力が生じます。8日目に出した通知が9日目に届いても有効です。記録が残る方法で出してください。

着物と家具を同じ日にまとめて売る場合はどうなりますか

品目ごとに扱いが分かれます。着物は訪問購入の対象なので8日間のクーリング・オフが使え、家具は対象外なので使えません。明細を品目ごとに分けて受け取っておくと、あとで区別できます。

売らないと言っているのに帰ってくれません

断った相手への勧誘は第58条の6第3項で禁じられています。それでも帰らない場合は、消費者ホットラインではなく警察に連絡してください。

まとめ

この記事のまとめ
  • 出張買取の危険は、業者の性質より先に、売る物で法律の守りが変わることから来ています
  • 着物、貴金属、ブランド品、骨董品は訪問購入の対象で、8日間のクーリング・オフと引渡しの拒絶が使えます
  • 家具、大型家電、書籍、自動車、CD・DVDは施行令第34条で対象から外れ、これらの権利が使えません
  • 頼んでいない訪問や電話は、その時点で第58条の6に反しています
  • 対象外の品目ほど、品目ごとの明細と総額を渡す前に確認しておくことが効きます

実家の片付けで着物や骨董品が出てきた場合の進め方は実家の片付けを業者に頼む前に確認することに、家電が売れるかどうかの見極めは家電の処分は4品目かどうかで出し先が変わるにまとめています。引越しにともなって家具を手放す場合の日程は引越しで家具を処分するときに、いつまでに何をするかを参照してください。

許可を持っているかどうかは、ご自身で確かめられます。お住まいの市区町村名と「一般廃棄物収集運搬業 許可業者」で検索してください。福井市、京都市、大阪市、名古屋市のように、許可業者の名簿を公開している自治体が多くあります。名簿が見当たらない場合は、業者に許可番号を聞いたうえで、市区町村の廃棄物の担当課に電話で照合できます。

今日やること
  1. 売る物が施行令第34条の6品目に当たるかを確認する
  2. 呼ぶ前に、査定に出す物と売らない物を別の場所に分けておく
  3. 当日は品目ごとの金額を書面で受け取る。対象の品物なら、8日の間は渡さずに置いておける

出典

この記事を書いた人

預ける・捨てる・売るの判断材料を、法令と公的な調査を根拠に比較しています。

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