引越しが決まってから家具の処分を考え始めると、たいてい間に合いません。自治体の粗大ごみは申し込んだ日に取りに来てくれるわけではなく、収集日はこちらでは選べないからです。引越し日が動かせない以上、処分は引越し日から逆算して決めることになります。
もう1つ、あとから困るのが引越し業者に何を頼めるかです。これは業者ごとのサービスの違いに見えますが、運ぶことを引き受けない荷物、荷造りを誰がするか、直前にキャンセルしたときの手数料は、国が定めた標準引越運送約款で決まっています。この記事では、逆算の日程と、約款で決まっている範囲を整理します。
- 引越し日から逆算した、家具処分の日程
- 引越し業者が引き受けないと約款に書かれている荷物
- 荷造りと家具の解体は誰の負担になるか
- 直前にキャンセルしたときの手数料の上限
- 新居に入りきらないと分かったときの選択肢
家具の処分は、引越し日から逆算して決める
処分の方法そのものは、まだ使えるか、期限があるか、運び出せるかの3つで決まります。引越しの場合は2つめの期限が最初から決まっているので、実質的には日程の問題になります。

| 時期 | やること | 遅れるとどうなるか |
|---|---|---|
| 1か月前 | 残す物と手放す物を分け、売る物を出品する | 売れる前に引越し日が来て、処分費を払うことになります |
| 3週間前 | 自治体の粗大ごみを申し込み、収集日を確認する | 収集日が引越し日より後になり、この方法は使えなくなります |
| 2週間前 | 引越し業者の見積もりで、運ばない品目と別料金の品目を確認する | 当日に運べないと言われ、その場で処分先を探すことになります |
| 1週間前 | 残った物を回収業者に依頼し、搬出経路を伝える | 直前は予約が埋まりやすく、割増の料金になります |
| 当日 | 引取サービスがあれば同時に引き渡す | 旧居に物が残り、鍵の返却や立会いが済まなくなります |
この日程で最も動かせないのが、3週間前の粗大ごみの申込です。自治体によっては収集まで2週間から1か月かかり、年度末の3月は特に混み合います。引越しが決まった時点で、まず品目と手数料と収集までの日数を調べてください。ここが間に合わないと分かった時点で、自治体という最も安い選択肢が消えます。
処分の方法ごとの費用と日数の比べ方は、 不用品の処分方法を条件で選び分ける手順 で整理しています。ここでは引越しに固有の部分だけを扱います。
引越し業者が引き受けない荷物は、約款で決まっている
引越し業者に何を頼めるかは、各社が自由に決めているわけではありません。国土交通省が定めた標準引越運送約款があり、多くの業者がこれをそのまま、または一部を変更して使っています。契約書の裏面や見積書に約款が添えられているのはこのためです。
約款は、運送の申込みがこの約款によらないものであるとき、運送に適する設備がないとき、運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき、天災その他やむを得ない事由があるときに、引受けを拒絶することがあると定めています。あわせて、現金や有価証券、宝石貴金属といった貴重品、火薬類その他の危険品、動植物、ピアノ、美術品についても、引受けを拒絶することがあるとしています。
標準引越運送約款(平成2年運輸省告示第577号)
ここで注意したいのは、拒絶できると書かれているだけで、必ず断られるわけではないという点です。ピアノや美術品は、事前に申告すれば専門業者への手配や別料金で運んでもらえることがあります。逆に、申告せずに当日を迎えると、その場で運べないと言われ、旧居に残ることになります。
ピアノ、美術品、大型の水槽、金庫。取扱いに技術が必要な物は、見積もりの段階で伝えます。
現金、有価証券、宝石貴金属、通帳、印鑑、重要書類。紛失時の補償の対象外になります。
火薬類、スプレー缶、灯油、ガスボンベなどの危険品。中身を使い切ってから自治体の方法で出します。
荷造りと家具の解体は、原則として依頼した側の負担になる
処分する家具でも、運ぶ家具でも、解体が必要な物はあります。これが誰の作業になるかも約款に書かれています。

荷送人は、荷物の性質、重量、容積、運送距離等に応じて、運送に適するように荷造りをしなければなりません。
標準引越運送約款(平成2年運輸省告示第577号)つまり荷造りは、依頼した側の義務が出発点です。そのうえで約款は、申込みに応じて業者が荷造りを行うこともできると定めており、この場合の費用は依頼した側の負担になります。おまかせプランや荷造りサービスが別料金になっているのは、このためです。
処分する家具についても同じ考え方です。組立式のベッドやタンスは、解体してあれば自治体の燃えるごみとして出せる場合があり、解体していなければ粗大ごみになります。解体をご自身で行えば手数料が下がり、業者に頼めばその分の料金が乗ります。どちらが得かは、工具の有無と時間で決めてください。
解体の前に、新居で使うかどうかを確定させてください。組立式の家具は、一度解体すると強度が落ちて再組立に耐えないことがあります。迷っている家具を先に解体してしまうと、運ぶ選択肢が消えます。
家具の種類によって、向いている処分先が変わる

同じ家具でも、解体できるかどうか、中古で需要があるかどうかで、選ぶ先が変わります。引越しの直前に1点ずつ調べる時間はないので、種類ごとの傾向を先に押さえておきます。
| 家具 | 解体 | 売れやすさ | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 組立式のベッド | できる | 低い | 解体すれば燃えるごみに出せる自治体があります。ネジの欠品で再組立ができないことがあります |
| マットレス | できない | 低い | スプリング入りは受け付けない自治体があります。事前に品目を確認してください |
| ソファ | できない | 中くらい | 大きさで手数料が変わります。搬出時に玄関を通らないことがあります |
| タンス、食器棚 | 物による | 低い | 引き出しを抜くと軽くなり、搬出の加算を避けられることがあります |
| デスク、椅子 | できる | 中くらい | 事務用の定番品は買取の対象になります。型番で調べられます |
| カーペット、ラグ | 切れる | 低い | 指定の袋に入る大きさに切れば、燃えるごみに出せる自治体があります |
| ブランド家具 | 物による | 高い | 型番と購入時期が分かると査定が上がります。処分に回す前に調べてください |
この表で分かるのは、売れる見込みがあるのはブランド家具と事務用の定番品くらいだということです。一般的な量販店の家具は、中古の需要が小さく、送料と手間に見合いません。引越しの限られた時間のなかでは、売る対象を絞って、残りは処分に回したほうが早く終わります。
なお、家電4品目は積み放題の料金にも粗大ごみにも含められないため、引越しの手配とは別に経路を決めておく必要があります。リサイクル料金と収集運搬料金の分かれ方と、指定引取場所への持込の手順は 家電の処分は4品目かどうかで出し先が変わる にまとめています。
旧居に物を残すと、明渡しが終わらない
処分が間に合わず、旧居に家具を残したまま鍵を返そうとすると、そこで止まります。賃貸借契約は、借りた物を契約の終了時に返すことを約束する契約だからです。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
民法(明治29年法律第89号)物が残っている状態は、借りた物をそのまま返したことになりません。そのため、多くの賃貸借契約では、残置物があった場合に貸主が撤去し、その費用を借主に請求すると定めています。請求される金額は、ご自身で処分した場合より高くなるのが通常です。
残置物の撤去費用は、敷金から差し引かれることがあります。差し引かれた結果、敷金では足りずに追加で請求される場合もあります。処分が間に合わないと分かった時点で、費用が上がっても回収業者に頼んだほうが、結果的に安く済みます。
分譲マンションを売却する場合も同じで、引渡しの日までに室内を空にしておくのが原則です。売買契約で残置物の扱いを取り決めている場合を除き、残っている物は売主の負担で撤去することになります。
解約手数料は前日が運賃の10パーセント、当日が20パーセント
処分の日程が崩れると、引越しそのものを動かす話になります。そのときに効いてくるのが解約手数料です。これも約款で上限が決まっています。

| 解約または延期を申し出た日 | 手数料の上限 | 何に対する割合か |
|---|---|---|
| 引越しの前日 | 10パーセント以内 | 見積書に記載した運賃 |
| 引越し当日 | 20パーセント以内 | 見積書に記載した運賃 |
ここで見ておきたいのは、割合の対象が運賃だということです。オプション料金や資材費ではなく、見積書に運賃として書かれた金額が基準になります。見積書に運賃と付帯サービス料が分けて書かれているかを、契約の時点で確認しておくと、あとで計算が食い違いません。
2日前までであれば手数料はかからないことになりますが、繁忙期は代わりの日が取れません。処分が間に合わないと分かった時点で、引越しを延ばすのではなく、処分の方法を切り替えるほうが現実的です。自治体の収集日に間に合わないなら回収業者に、回収業者が埋まっているなら引越し業者の引取サービスに、と順に落としていきます。
もうひとつ、知っておくと効く規定があります。約款は事業者に対して、荷物の受取日の2日前までに、見積書の記載内容に変更がないかを申込者へ確認するよう義務づけています(第3条第7項)。そして第21条には、この確認を行わなかった場合には解約手数料または延期手数料を請求しないと書かれています。前日に解約することになったとき、事前の確認連絡が来ていたかどうかで扱いが変わります。
新居に入りきらないと分かったときの選択肢
間取り図では入るはずだった家具が、実際には入らないことがあります。搬入経路が原因のことが多く、部屋の広さではなく、玄関の幅、廊下の曲がり、階段の踊り場、エレベーターの扉の大きさで決まります。見積もりの段階で、新居の玄関と廊下の寸法を業者に伝えておくと、当日に判明する事態を避けられます。
- 窓からの吊り下げで搬入できるかを業者に確認します。可能な場合は別料金になります。
- 解体して搬入できるかを確認します。組立式でない家具は解体すると戻せません。
- その家具を手放すか、しばらく預けるかを決めます。買い直す金額と、預ける期間の合計額を比べます。
3つめの、預けるか手放すかの判断は、月額ではなく総額で比べます。月8,000円を2年続ければ19万2,000円です。その家具を買い直す金額がこれを下回るなら、手放したほうが安く済みます。マンションにお住まいなら、外部の収納を探す前に、ご自身の建物に使える収納がないかを先に確認してください。共用部の物置や住戸に付属した収納は、申込だけで使えることがあります。タイプごとの違いと確認する書類は マンションのトランクルームは3タイプあり、申込方法も契約の型も違う にまとめています。
手放すと決めた家具のうち、状態のよい物は売れます。引越しの直前は時間がないので、フリマアプリより、集荷に来てもらえる宅配買取か、まとめて引き取ってくれるリサイクルショップのほうが現実的です。引越し業者のなかには買取を兼ねているところもあり、見積もりの段階で相談できます。
3月と4月の引越しは、予定を2週間前倒しにする
ここまでの日程は通常期のものです。3月中旬から4月上旬は、引越し業者だけでなく、自治体の粗大ごみ、回収業者、買取業者のすべてが混み合います。同じ手順でも、それぞれの待ち時間が伸びるため、全体を前倒しにする必要があります。
| やること | 通常期 | 3月から4月 | 混む理由 |
|---|---|---|---|
| 自治体の粗大ごみの申込 | 3週間前 | 5週間前 | 年度末に転居が集中し、収集の枠が先まで埋まります |
| 引越し業者の見積もり | 2週間前 | 1か月半前 | 希望日が取れず、日にちを選べなくなります |
| 回収業者の予約 | 1週間前 | 3週間前 | 直前の駆け込みが増え、割増料金になります |
| 買取の査定 | 随時 | 2週間前 | 出張査定の枠が埋まり、日程が合わなくなります |
この時期にもう1つ起きるのが、料金の上昇です。引越し料金そのものが通常期の2倍近くになることがあり、回収業者も同じように上がります。日程をずらせるなら、3月下旬を避けて4月中旬以降にするだけで、処分にかかる費用も下がります。
- 自治体の処理施設への直接持込を先に調べます。収集より予約が取りやすく、料金も安いことがあります。
- 売る物は引越しの1か月前までに手放します。この時期は中古品の出品も増えるため、売れるまでの日数が伸びます。
- 引越し業者の引取サービスは点数の上限があります。上限を超える分だけ、別の方法を先に押さえます。
- 見積もりは3社以上で取り、運搬費と階段料金が含まれるか、税込か税別かを揃えて比べます。
引越し業者に処分を頼むか、別の業者に頼むかの分かれ目
引越し業者の引取サービスは、当日にまとめて片付く点が最大の利点です。ただし引き受けられる品目には制限があり、料金も自治体より高くなります。引越し業者が家庭から出たごみを収集運搬するには、一般廃棄物収集運搬業の許可か、許可を持つ業者との連携が必要だからです。
| 依頼先 | 費用 | 日程 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 自治体の粗大ごみ | 最も安い | 申込から数日から1か月 | 3週間以上前に動けて、指定場所まで出せる |
| 引越し業者の引取 | 高め | 引越し当日 | 点数が少なく、当日にまとめて片付けたい |
| 不用品回収業者 | 高め、量が多いと割安 | 即日から数日 | 点数が多い、部屋から運び出せない |
| 買取業者 | 収入になる | 査定から数日 | 状態がよく、まだ売れる家具や家電 |
点数の目安として、2点3点であれば引越し業者の引取が手間の面で有利です。それ以上になると回収業者のトラック単位の料金のほうが安くなることがあります。どちらの場合も、許可の種類と番号を確認してから依頼してください。確認の方法は 不用品の処分方法を条件で選び分ける手順 の後半に整理しています。
よくある質問
旧居に物を残したまま引き渡すことはできないので、自治体を諦めて別の方法に切り替えます。回収業者に依頼するか、引越し業者の引取サービスを使うか、自治体の処理施設に直接持ち込む方法があります。持込は予約が必要な自治体が多く、収集より安いことがあるので、まず持込の可否を確認してください。
約款では、荷造りは荷送人の義務が出発点で、業者が行う場合は依頼した側の負担と定められています。解体と組立を含むプランを用意している業者が多いので、見積もりの段階で、どの家具が対象で、いくら加算されるかを確認してください。処分する家具の解体まで含まれるとは限りません。
標準引越運送約款では、前日までの解約は見積書に記載した運賃の10パーセント以内、当日は20パーセント以内と定められています。対象は運賃であって、オプション料金や資材費ではありません。実際の金額は各社の約款によるので、契約時に確認してください。
灯油は危険品にあたるため、引越し業者は運びません。ストーブ本体とタンクの灯油を使い切り、残った分はガソリンスタンドや購入した販売店に相談してください。下水や側溝に流すことはできません。スプレー缶やカセットボンベも同じ扱いで、中身を使い切ってから自治体の指定する方法で出します。
決められないまま運ぶと、新居で置き場所に困り、結局もう一度処分することになります。買い直す金額と、預ける場合の総額を比べて、買い直しのほうが安いなら手放してください。判断そのものを先送りしたい場合だけ、期間を決めて預けます。期間を決めずに預けると、総額が買い直しの金額を超えます。
まとめ
引越しの家具処分は、方法を選ぶ問題ではなく日程の問題です。自治体の粗大ごみは最も安い代わりに収集日を選べないので、引越しが決まった時点で申し込みます。ここが間に合わないと、残るのは回収業者と引越し業者の引取だけになり、費用は上がります。
引越し業者に頼める範囲は、標準引越運送約款で決まっています。現金や貴重品、危険品、動植物、ピアノ、美術品は引受けを拒絶されることがあり、荷造りは依頼した側の義務が出発点で、解約手数料は前日が運賃の10パーセント、当日が20パーセントです。この3点を見積もりの段階で確認しておけば、当日に想定外のことは起きません。
- 引越し日が決まった日のうちに、自治体の粗大ごみの受付に申し込む
- 引越し業者の見積もりのときに、運ばない家具を品目で伝える
- 売る物は、集荷と査定に日数がかかるので、粗大ごみの申込と同じ日に手配する
出典
- 標準引越運送約款(全文)/全日本トラック協会 第4条、第7条、第21条
- 国土交通省「標準運送約款」
- 民法(明治29年法律第89号) 第601条
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号) 第7条第1項
約款は各社が変更していることがあり、法令も改正されます。最終的な確認は、契約する業者の約款と、お住まいの自治体の案内でお願いします。
